ソフトウェアの勘定科目の定義とは? ケース別に仕訳方法を解説

業務にパソコンを使用するのが当たり前になった現代において、業務用のソフトウェアを導入することは珍しくないことでしょう。
ソフトウェアは、「インストール型」か「クラウド型」かで会計処理が変わります。また、資産計上をする場合も費用計上する場合もあるので注意が必要です。

この記事では、ソフトウェアについて正しい会計処理を行うための基本知識と仕訳例について解説します。是非、最後までお付き合いください。

ソフトウェアは資産計上する場合と費用計上する場合がある! その定義とは

そもそもソフトウェアとは|定義と具体例

ソフトウェアとは、コンピューターに対して命令を出すプログラムのことを言います。パソコンやスマートフォンといったハードウェアが動作するのは、ソフトウェアのお陰です。

会計においてはコンピュータープログラムやシステムの仕様書・フローチャート等の関連文書を指します。通常、ホームページといったコンテンツは含まれません。

しかし、実態としてソフトウェアとコンテンツが経済的・機能的に一体不可分であると判断できるなら一体として取り扱うこともあります。

ソフトウェアに用いる勘定科目に法律の定義はない

一般的に使用可能期間が1年以上・取得価額が10万円以上であればソフトウェア等の勘定科目を用いて無形固定資産として資産計上します。

一方で、使用可能期間が1年未満もしくは取得価額が10万円未満のときは少額減価償却資産に該当するため費用勘定を使って費用計上することになりますが、費用の勘定科目の選び方は税法等で明確なルールがあるわけではありません。よって、企業がわかりやすいものを裁量で決定します。

企業会計原則には「継続性の原則」というものがありますから、ソフトウェアに使用する勘定科目を決定したらむやみに変更しないようにしましょう。

計上の仕方が異なるケース①インストールして使用するソフトウェアを導入

インストール型であれば、取得価額によってソフトウェア等の資産勘定を使って資産計上するか、消耗品費等の費用勘定を使用して費用計上することになります。

10万円以上なら「ソフトウェア」

ソフトウェアは固定資産に該当するものですので、原則としてソフトウェア等の勘定科目を用いて無形固定資産として資産計上をします。そして、減価償却をしなければなりません。

【補足】無形固定資産

権利のように「形のない・物体ではない・物理的実体のない」という特徴を持つ固定資産です。権利の内容により、以下のような種類に分類されます。

  1. 法律上の権利
  2. 法律により知的生産物等に与えられる独占的権利
  3. 特定の施設に対する利用権等の契約上の権利
  4. ソフトウェア
  5. 営業権等の企業信用等により超過収益力をもたらす権利(のれん)
  6. リース資産

借地権・電話加入権以外の無形固定資産は減価償却の対象となります。

システム設定費用等は取得費用に含める

取得価額は、

「購入の対価+購入に要した費用+事業の用に供するために直接要した費用」

です。

要するに、取得価額にはソフトウェアそのものの代金のほかに、導入に必要となる設定作業・自社仕様に合わせるための修正作業等。つまりはシステム設定費用等の付随費用が含まれます。

10万円未満なら「消耗品費」とするのが一般的

使用可能期間が1年未満もしくは取得価額が10万円未満の場合は、ほかの減価償却資産と同様に少額減価償却資産として消耗品費・外注費・支払手数料・通信費等の勘定科目を用いて費用計上することが可能です。

インストール型の場合は、一般的に消耗品費が使用されます。

取得価額の判定は納税者の経理方式による

取得価額に消費税の額を含めるかどうかは、納税者の経理方式によって異なります。

  • 税込経理:消費税を含んだ金額を取得価額とする
  • 税抜経理:消費税を含まない金額を取得価額とする

仕訳例|資産とするか費用とするかで仕訳が異なる

これまでお話してきたように、ソフトウェアは取得金額によって資産計上する場合と費用計上する場合があります。それぞれの仕訳を見ていきましょう。

資産計上したときの仕訳

資産計上する場合の仕訳は以下の通りです。

例)ソフトウェアを購入し、代金30万円を普通預金から支払った。

借方金額貸方金額
ソフトウェア30万円普通預金30万円

決算時には減価償却費を計上します。耐用年数は、「複写して販売するための原本」もしくは「研究開発用のもの」でなければ5年です。

【補足】ソフトウェアの耐用年数

  • 複写して転売するための原本・研究開発用:3年
  • その他:5年

期首にソフトウェアを購入し、定額法で12か月償却をした場合の償却費を計算してみましょう。定額法の減価償却費は、「取得価額×定額法の償却率」です。

まず、定額法の償却率を計算します。

1÷5年=0.2

続いて、取得価額に定額法の償却率を乗じます。

30万円×0.2=6万円

購入したソフトウェアの当期の減価償却費は、6万円です。

減価償却費を計上する際には、直接法と間接法の2つの計上方法があります。企業がどちらの方法を採用しているか確認し、合った方法で仕訳をします。

例)決算時に当期分の減価償却費を計上した。(直接法)

借方金額貸方金額
減価償却費6万円ソフトウェア6万円

例)決算時に当期分の減価償却費を計上した。(間接法)

借方金額貸方金額
減価償却費6万円減価償却費累計額6万円

減価償却についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>減価償却とは? しないとどうなるのか・計算や仕訳方法を簡単に紹介

次に10万円以上のソフトウェアを購入した場合に使用できる、税務上有利になる2つの制度についてご紹介します。

【応用①】少額減価償却資産の特例を適用するときの仕訳

中小企業者が10万円以上30万円未満の資産を費用計上できる制度のことを、少額減価償却資産の特例と言います。

そもそも少額減価償却資産とは、使用可能期間が1年未満であるか取得価額が10万円未満の資産のことです。10万円未満の少額減価償却資産は、取得金額のすべてを費用処理することが可能です(即時償却)。

そして、資本金1億円以下の中小企業者の場合は、30万円未満の少額減価償却資産についても全額を費用処理することが認められています。これが、少額減価償却資産の特例です。ただし、限度額は年間300万円までと定められています。

【応用②】一括償却資産として計上するときの仕訳

取得価額が10万円以上・20万円未満の減価償却資産は、通常の減価償却の方法とは異なり、例外的に3年間で均等償却することが可能です。ソフトウェアも減価償却資産ですので、一括償却資産として計上できます。少額減価償却資産の特例とは違って、全法人が対象です。

「一括償却資産」という勘定科目を作成しても良いですし、個別の資産勘定を使用しても良いでしょう。では、具体的にどのように仕訳するのか見てみましょう。

例)ソフトウェアを購入し、代金30万円を普通預金から支払った。そして、一括償却資産として計上した。

借方金額貸方金額
一括償却資産30万円普通預金30万円

3年間で均等償却しますから、1年あたりの償却費は30万円÷3年間で10万円です。年度の途中でソフトウェアを取得したとしても、減価償却費の月割計算はしません。

例)決算時に当期分の減価償却費を計上した。

借方金額貸方金額
減価償却費10万円一括償却資産10万円

この2つの制度を活用すれば、通常の減価償却よりも費用として計上できる金額が大きくなります。早期費用化により費用計上できる金額が大きくなれば、利益が小さくなって節税が可能です。

一括償却資産についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>一括償却資産とは? 要件や2種類の仕訳方法をわかりやすく説明

費用計上したときの仕訳

インストール型を費用計上する場合は、ほかの勘定科目と同じように仕訳します。

例)ソフトウェアを購入し、代金7万円を普通預金から支払った。

借方金額貸方金額
消耗品費7万円普通預金7万円

計上の仕方が異なるケース②クラウド上で使用するソフトウェアを導入

クラウド型の場合は、どうでしょうか。一般的には、金額にかかわらず通信費として費用計上します。

クラウド型は「通信費」とするのが一般的 

クラウド型は、「モノの購入代金」よりも「インターネット環境の使用料」としての意味合いが強くなります。よって、無形固定資産(ソフトウェア)を購入したという扱いにはしません。

代金は、通信費・消耗品費・外注費といった費用勘定を使って計上します。この場合は、通信費を使用するのが一般的です。

インストール型であれば、取得価額が10万円以上であれば資産計上をします。しかし、クラウド型は利用料が10万円以上であっても資産計上をしません。

仕訳例|クラウド型会計ソフトの月額料金を支払った

クラウド型のソフトウェアの使用料を費用計上する場合は、ほかの勘定科目と同じように仕訳します。

例)クラウド型ソフトウェアの使用料5万円を普通預金から支払った。

借方金額貸方金額
通信費5万円普通預金5万円

ソフトウェアの経理業務で迷いやすい仕訳

ソフトウェアの除却 

ソフトウェアを無形固定資産として資産計上している場合は、これを事業に使用しなくなれば除却を行う必要があります。

直接法の場合は、減額した簿価を固定資産から取り除かなければなりません。よって、以下の仕訳を行います。

例)100万円で取得したソフトウェア(帳簿価格60万円)を除却した。(直接法)

借方金額貸方金額
固定資産除却損60万円ソフトウェア60万円

間接法の場合は、簿価と減価償却累計額の双方を取り除く仕訳をします。

例)100万円で取得したソフトウェア(償却累計40万円)を除却した。(間接法)

借方金額貸方金額
減価償却累計額40万円ソフトウェア100万円
固定資産除却損60万円

サポート・バージョンアップ料金

ソフトウェアを購入した場合は、サポート料金やバージョンアップ料金が発生することがあります。

ソフトウェアを固定資産として計上している場合は、サポート料金が導入に必要な付随費用に該当するなら取得価額に加えるのが適当です。また、導入後にサポート・バージョンアップを受けるときは、価値を高める資本的支出に該当する金額は固定資産として計上し、それ以外は支払手数料等の勘定科目を使用して費用として計上しましょう。

ソフトウェアを費用として計上する場合は、支払手数料・諸会費・雑費等の費用勘定のうち、企業に合うものを裁量で決定します。導入時の付随費用や月額料金に上乗せされたサポート料金等は、使用している勘定科目に上乗せするのが適当でしょう。

年間ライセンス契約料金

クラウド型の場合は、ライセンス使用契約を締結し料金を支払って使用します。1年間の料金を一括払いしている場合は、費用の期間帰属が正しくなるような仕訳が必要です。言い換えると、会計期間を跨って生じた費用は、各事業年度に適正に配分しなければなりません。

【例:会計期間が4/1-3/31の企業の場合】
8/1)契約期間が1年間のライセンス契約料金を当座預金から一括払いで支払った。

借方金額貸方金額
通信費24万円当座預金24万円

決算時の仕訳)

借方金額貸方金額
前払費用8万円通信費8万円

4/1-7/31の4か月分は翌期の費用です。

短期前払費用の特例により、支払時点で全額を費用計上することもできます。ただし、短期前払費用とするには、以下の要件を満たすことが必要です。

  • 支払日から1年以内に役務が提供される
  • 支払った金額に相当する金額を、継続して支払日が属している事業年度の損金に算入している

この場合の仕訳は以下の通りです。

8/1)契約期間が1年間のライセンス契約料金を当座預金から一括払いで支払った。

借方金額貸方金額
通信費24万円当座預金24万円

ソフトウェアの勘定科目の定義についてのまとめ

ソフトウェアの勘定科目は、「インストール型」か「クラウド型」で会計処理が異なります。費用処理をする場合は、インストール型には消耗品費を使用し、クラウド型には通信費を使用するのが一般的です。

また、インストール型の場合は、取得価額が10万円以上であれば資産計上することになります。反対に、クラウド型の場合は金額に寄らず費用計上が可能です。

取得価額が10万円以上でも「少額減価償却資産の特例」により費用処理をしたり、「一括償却資産」によって早期費用化する方法もあります。自社に合った方法で、ソフトウェアの会計処理を行ってください。

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oneplus編集部

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